ウエディングドレスを着せてやろう
「なんでだろうな……」
と光一は暗がりでスマホを見つめて呟いたが、

「さあ~、なんででしょうね~。
 今夜はもうご用はないようなので、では、これで。

 おやすみなさいませ」
と笑いながら、田畑は行ってしまう。

 こら、割って入ってこなくていいときは入ってくるくせに。

 来て欲しいときには来ないのか。

 どんな執事だ。

 話に付き合え、と思ったが、もう田畑の姿は消えていた。

 スマホを見つめる。

 見つめすぎて、花鈴の番号から着信し、
「あっ、専務っ。
 やっぱり、ご飯、おごってくださいっ」
と花鈴が言ってくる幻を見る。

 すでに十一時近いし、花鈴からそんなことを言ってくるわけもないのだが。
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