ウエディングドレスを着せてやろう
「でも――」
「でも、なんだ?」
と一旦、言葉を止めた花鈴に光一が言ってくる。
「いえ、仕事では、専務に意見とかしないようにしてるんですけど。
此処は対等でいいかなと思って、ちょっと反論してみようかと。
いいですか?」
と訊くと、光一は、
「いや、仕事でも意見も反論も言っていいぞ。
上司だって間違うことはたくさんあるからな」
特に俺のような若造は、と言ってきた。
なんていい上司なんだっ。
惚れましたっ、上司としてっ、と祈るように見上げながら、花鈴は言った。
「あの、恋人同士だからって、すべてを知らなくてもいいと思うんです」
……知られたくない、だらしないところもたくさんあるからな、と花鈴は思う。
「いつまでもミステリアスなところがあるのもいいかと。
何処かに謎な部分とか、異性ならではの神秘的な部分を残しておいた方が長続きしそうっていうか……」
そこで、ああ、と気づいた花鈴は苦笑いして言った。
「まあ、私たちはずっと続く関係じゃないから関係なかったですよね」
「いや」
いや……?
と顔を上げると、光一は視線をそらして、光る階数表示を見る。
「でも、なんだ?」
と一旦、言葉を止めた花鈴に光一が言ってくる。
「いえ、仕事では、専務に意見とかしないようにしてるんですけど。
此処は対等でいいかなと思って、ちょっと反論してみようかと。
いいですか?」
と訊くと、光一は、
「いや、仕事でも意見も反論も言っていいぞ。
上司だって間違うことはたくさんあるからな」
特に俺のような若造は、と言ってきた。
なんていい上司なんだっ。
惚れましたっ、上司としてっ、と祈るように見上げながら、花鈴は言った。
「あの、恋人同士だからって、すべてを知らなくてもいいと思うんです」
……知られたくない、だらしないところもたくさんあるからな、と花鈴は思う。
「いつまでもミステリアスなところがあるのもいいかと。
何処かに謎な部分とか、異性ならではの神秘的な部分を残しておいた方が長続きしそうっていうか……」
そこで、ああ、と気づいた花鈴は苦笑いして言った。
「まあ、私たちはずっと続く関係じゃないから関係なかったですよね」
「いや」
いや……?
と顔を上げると、光一は視線をそらして、光る階数表示を見る。