ウエディングドレスを着せてやろう
「いい上司ねえ。
もっと違う惚れ方してあげれば?」
ともうこの話題には飽きたのか、詩織はどうでもよさそうに雑誌をめくりながら言ってくる。
昼休み、二人でリラクゼーションルームに来ていた。
他とは壁でちょっとだけ区切られた場所にソファが置いてあるので、そこで、そんな内緒話をしていたのだ。
「そんなことより、コンパはいつ?
その専務と対等に話せる二人きりの時間とやらのときに、専務に訊いてきてよ。
会社の人間は呼べないだろうから、他でそろえてくるからさ」
すると、花鈴たちが居るソファのところを通りすぎかけた同期の愛《あい》がそのままの姿勢で後退してきた。
ひょいと中を覗き、言ってくる。
「今、コンパと聞こえましたが?」
「……あんた、どんな地獄耳よ」
と言った詩織は、ちょっと来なさい、と愛に向かい、手招きをした。
なにも考えずに、ひょいと身を屈めて詩織の前に首を突き出した愛の首に、詩織は素早く腕を回すと、ヘッドロックをかけるような姿勢になる。