メーティスの頭脳
一 自分だけが知らないこと
「ねえねえ、映画を何本か借りてきたから一緒に見ようよ!!」

日曜日の午後、変わり者の寄生虫学者である宍戸玲奈(ししどれいな)の助手をしている浜田透(はまだとおる)は、看護師として働いている飯野美咲(いいのみさき)に声をかけられた。

「映画ってどんなものを借りてきたんですか?」

映画が好きな透は目を輝かせる。美咲は「こんなのを借りてきたよ!」と袋から映画を出す。その刹那、透は顔を真っ青にした。

美咲が借りてきたのは、Itや貞子vs伽倻子などのホラー映画だったのだ。それを「どれから見ようかな〜」と美咲は楽しそうにしている。

「美咲さんってホラー好きなんですか?」

顔を真っ青にしながら透が訊ねると、「大好きだよ!」と笑顔で返事が返ってくる。

「ホラーとかグロテスクな映画って大好き!恋愛モノとかよりずっと面白いよ〜」

透は開いた口が塞がらず、楽しそうにする美咲を見つめることしかできない。ただでさえ玲奈が変人なため、他の同居人はまともだと思っていたからだ。
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