完璧御曹司の優しい結婚事情


私が小学2年生の頃、実の両親は交通事故で他界した。1人になってしまった私を引き取ってくれたのは、母方の祖父母だった。


祖父母に後押しされて、就職を機に一人暮らしを始めたものの、高齢になった2人から離れるのは、気が気じゃなかった。
おまけに、高校生の時から家に住みついて、すっかり家族の一員となっていた、猫の太郎君をおいていくのも気が引けた。

ただ、就職を考え始めるタイミングで、叔母夫婦が祖父母宅の近くに移り住むことが決まり、祖父母の家を出る覚悟を決められた。
育ててくれたお礼は当然したい。毎月仕送りをすることを申し出ても、祖父母は受け取ってくれなかったから、叔母に託している。
もちろん、私自身も時間を見つけてはちょくちょく帰るようにしている。祖父母のことも太郎君のことも、気になっていたから。


溢れそうになる涙を必死に堪えて、足早に自席にもどるも、眦に滲んだ涙は隠しきれそうになかった。

< 10 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop