完璧御曹司の優しい結婚事情
「それぐらいのことを、僕は香穂にしたんだ。
彼女の最後のお願いと言われていたから、僕のはめていた指輪は棺に入れた。ご両親の要望で、婚姻終了届も出した。だから、表面上は彼女とのつながりは切れている。それでも僕は、あの時のまま、後悔し続けているんだ」

課長の抱えているものの大きさに、私まで胸が苦しくなる。何を言えばいいのか言葉が見つからず、俯いていた。

「川村さん……」

不意に大きな手で頬に触れられて、ビクリとする。

「ごめんね……こんな話を聞かせて、泣かせてしまって」

「えっ……？」

いつのまに……
自分の目元に手を当ててみると、涙で濡れていた。

「なんか……川村さんに聞いて欲しいって思ってしまって」

私の涙を見て、課長が話したことを後悔しているように見えて、必死で首を横に振った。うまく言葉にできない思いが、自分の中に溢れてくるのがわかる。伝えたいのに言葉が見つからない。
それでも、こんな課長を放っておくことができなくて、必死に話した。


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