完璧御曹司の優しい結婚事情

「なんか……すごくホッとした。今川村さんは、思ったことを僕に語ってしまったって、後悔の表情をしていたね。こういうことなんだね。
川村さんは、僕のことを思って、僕のために話してくれた。だからそこには意味が生まれた。
川村さんの言葉は、ちゃんと僕の心を軽くしてくれたよ。ありがとう。だから、後悔しないで」

課長の言葉に、首を縦に振る。
よかった。私の拙い言葉にも、ちゃんと伝わるものがあったようだ。

「失礼ついでに、もう一つだけ言わせてください。課長、後悔した時は泣いてもいいんですよ。ちゃんと涙をながして。って、これも自己満足にすぎないんでしょうが……すごく、すっきりしますよ」

再び目を見開いた課長は、またすぐに穏やかな笑みにか戻った。会社で見せるものと違う、さらに温かな笑みだった。
なんだろう、この笑みは……妙に私の心を暖かくしてくれる。この笑みをもっと見たいと思った。
どうしてこんな気持ちになるのか、なんとなく気付いてしまった。

私、真田課長のことを好きなんだ。

誰もが憧れる完璧ぶりも、プライベートで見せたいたずらっ子のような部分も、誰かのことを思ってずっと悩み続ける優しさも。全部、全部ひっくるめて、真田課長のことが好きだ。