完璧御曹司の優しい結婚事情
せめてもと片付けを申し出て、なんとかやらせてもらった。これぐらいじゃ、お返しには程遠いんだけど……

食後、すぐに帰るつもりだったけれど、課長が再びコーヒーをいれてくれて、ソファーに腰を下ろした。

「すみません。長居してしまって」

「いや。僕が引き止めているようなものだから」

くいっと、手に持ったカップを持ち上げて見せる課長。なかなかお目にかかれない仕草に、おもわずドキドキしてしまう。
昨夜見せてくれた弱ったような姿も、今見せている姿も、その一つ一つに胸がときめく。
少しでも一緒にいたいと思ってしまう私には、こうしてここにいられる理由ができるのは嬉しいことだ。でも、せっかくの休日をじゃましてしまっているのも心苦しく思う。

「川村さん、昨日は話を聞いてくれてありがとう」

「いいえ。偉そうなことばかり言ってしまって……」

「いや。ありがとう。僕と川村さんの秘密にしておいてね」

「もちろんです」

どんなことにせよ、好きな人と2人だけの秘密が増えることは嬉しい。

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