完璧御曹司の優しい結婚事情
SIDE 樹
僕が背負う、大きな過ち……

ずっと妹のように、大切に思っていた幼馴染の山梨香穂。生まれつき心臓が弱くて、ほとんどの時間を病室で過ごしていた彼女のことが、ずっと不憫でならなかった。
学校へ行くことも、友達と遊ぶことも、他の子が普通にしていることを、何一つ満足にできない香穂。

自分の家族とうちの家族、医療関係者という限られた人間にだけ囲まれた生活。
行きたいところにも行けず、やりたいこともできず。そんな自由のない狭い世界で、彼女は常に病と闘い、死と隣り合わせで生きていた。

何かしてやりたいのに、何もできないもどかしさ。僕は彼女を見舞うたびに、そんなジレンマに陥っていた。


長く生きることは難しいと言われていた香穂だったけれど、なんとか20歳の誕生日を迎えることができた。僕の家族も駆けつけて、みんなで盛大に祝った。周りの笑顔に、香穂も幸せそうにしていた。香穂が、自分のせいで周りに涙を流させていることを気に病んでいることに、僕は気付いていた。だからこそ、この時の彼女の笑みは嬉しかった。

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