完璧御曹司の優しい結婚事情

ただ……僕はそんな彼女の様子よりも、彼女の周りを囲む男たちの様子が気になっていた。なんとか川村さんに近付こうとするのがあからさまで、自分の中にどす黒い負の感情が湧き上がるのがわかった。
経験したことのないようなその強い感情に、自分自身が驚いていた。


すっかり酔い潰された彼女を、誰が送っていくのかというやり取りが始まった時、放っておくことはできなかった。この気持ちは嫉妬であり、自分は彼女に惹かれていることをはっきりと自覚した。

香穂がいなくなって以来、こんな感情を抱くことは一切なかった。ずっと否定してきた〝人を愛する〟という気持ちが芽生えるのを自覚すると同時に、香穂に対する後ろめたさも感じていた。僕は必死に〝川村さんを守るためだ〟と自分に言い訳をしながら、彼女と男達の間に入った。