完璧御曹司の優しい結婚事情

「課長の心が泣いている気がして……」
「香穂さん、ちゃんと恋してたじゃないですか」
「相手のことを想って起こした行動なら、そこに意味が生まれるはずです」


川村さんのくれる一言一言が、僕の心を溶かしていく。


「後悔した時は、泣いてもいいんですよ。ちゃんと涙を流して」


その夜、僕は香穂のことを思い出しながら、気付けば涙を流していた。
香穂は幸せだったのだろうか……それは、香穂本人にしかわからない。でも、「ありがとう」と最期の時に見せてくれた笑みは、温かなものだったことを思い出した。

川村さんの言葉に、自分の中で覚悟が決まった。香穂のご両親とも、きちんと話したいと思ったし、もう一度、香穂にきちんと別れを告げに行こうと思った。そして、それには川村さんにも一緒に来て欲しかった。