完璧御曹司の優しい結婚事情
「久美さん、今日は香穂とのことを話しにきたんです。僕の話を聞いてください」

「もちろん」

久美さんは、香穂そっくりな笑みを返してくれた。その笑みに後押しされて、僕は香穂と結婚した経緯を話した。




「香穂の気持ちを無視して、あんな形で結婚してしまったことを、ずっと後悔してきました。もっと話をして、もっと香穂の気持ちに寄り添って、本当に望むことをしてやれてたらって、何度も何度も思いました。身勝手なことをしてしまい、すみませんでした」

僕の懺悔を、久美さんは優しく見つめながら静かに聞いている。罵られても、追い出されても仕方がないと覚悟してここへ来た。
とにかく自分の想いを聞いてほしくて、一方的に話し終えたところで、久美さんは初めて口を開いた。

「樹君。一つ聞いていい？」

「はい」

「樹君は、あの結婚で戸籍に傷がついてしまったことを後悔してる？」

「当時も今も、後悔は全くしてません。それに、傷だなんて思ったことはありません」

それだけは即答できる。

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