完璧御曹司の優しい結婚事情
「そう。私はね、樹君のその気持ちだけで十分に嬉しいの。あの時、樹君が香穂と結婚するって言い出して、正直すごく驚いたし戸惑ったわ。香穂がもう長くないことはわかっていたから。それに、樹君が香穂に抱いているのは家族愛だってわかっていたから。
でもね、私と2人になった時、香穂が私に言ったの。樹君の行動が同情からだったとしても、私のことを想ってそこまでしてくれたことが嬉しいって。それはもうすごく幸せそうに笑ってた。あの子、ずっと樹君のことが好きだったから。だから、私たち夫婦は樹君のその優しさに、ある意味付け込んだと思ってる。愛娘の最後の願いを叶えたいがために」

「そんなことありません。漬け込まれただなんて、僕は少しも思っていません」

「ありがとう。樹君、私達はお互いにすれ違ったまま、ずっと後悔してきたみたいね」

考えてもみなかった。香穂のご両親が、あの結婚をそんなふうに捉えていたなんて……






< 139 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop