完璧御曹司の優しい結婚事情

「川村さんだから、聞いて欲しいと思ったんだ。君と話をしたことがきっかけで、僕は一歩前に踏み出そうと思えたんだ。川村さんに、結末まで聞いてもらいたい。そうすることで、やっと過去から解放されるような気がするんだ」

〝川村さんだから〟という言葉に、おもわず反応してしまう。課長は他の誰でもなく、私に聞いて欲しいと言ってくれた。そんなふうに言われたら、なんだか自分が特別な存在になった気がしてしまう。

「そう言ってもらえることは、すごく嬉しいです。お話を聞くことぐらいしかできませんが、喜んで聞かせてもらいます」

「ありがとう。場所は車で３０分ぐらい行った所にあるんだ。１１時半頃に迎えに行くよ。お参りに行く前に、食事に誘わせて。付き合ってもらうお礼にご馳走させて」

「い、いえ。そんな気を遣っていただかなくても……」

「その時に話を聞いて欲しいんだ」

「……でしたら……ご一緒させていただきます」

本当なら、２回も泊めてもらったお礼をこちらが申し出るところなのに……
でも好きな人からそんなふうに誘われて、嬉しく感じている自分もいる。

「それじゃあ、来週の日曜日に」

「はい」