完璧御曹司の優しい結婚事情

「ああ、おはよう。すごい雷雨だったね。川村さんと一緒に、早い段階でタクシーに飛び乗ったから、セーフだったよ」

「あぁぁ……俺もあのタイミングで帰ればよかった。そしたら、菜月ちゃんと一緒にタクシーに乗って送っていけたのに……」

「前島は、帰る方角が全く違うだろ」

「そうですけど。そこは女の子を1人で帰すわけにもいかないから、ちゃんと送りますって」

「そう。まあでも、川村さんはこの前、前島達に酔い潰されてるから、警戒してるんじゃないか」

「ええー！？葉月ちゃん、そんなことないよね？あの時は楽しくて……悪気はなかったんだ。俺のこと、警戒しないで」

前島さんが、眉を下げて必死に訴えてくる。その後ろで、課長が人差し指を立ててシーっとやってみせた。あの日、泊めてもらったことは秘密でという合図だろう。オフィス内でのそんなやりとりに、ドキドキしてしまう。

「だ、大丈夫です。考えなしに飲んでしまった私も悪かったんです。また皆さんと行きたいですね」

「よかった。もちろん、また行こう。２人っきりでもいいし」

「いや……それは……」