完璧御曹司の優しい結婚事情
「課長は素敵だもんね。私のいいなあっていうのは憧れでしかないけど、葉月ちゃんの気持ちはたぶん……本気なのかな?
お姉さんがいつでも何でも話を聞いてあげるからさあ、悩み過ぎないで。政略結婚だとか、想像に過ぎないんだから。ごめんね、適当なことばかり口走っちゃって」

佐藤さんの優しい言葉に、目頭が熱くなるのがわかる。
ここのところ、課長の特別な姿を目にして、少し自惚れていたのかもしれない。課長は誰にでも平等に優しい人だ。2回も泊めてくれたのだって、課長の優しさからだ。過去の話を聞かせてくれたのだって、単にそういうタイミングだったってだけかもしれない……

後悔はしたくない。
上司と部下という関係に、ヒビが入るようなことはしたくない。

だから、自分の気持ちに蓋をしてしまおう。
日曜の香穂さんのお墓参りは、乗り掛かった船だ。約束した通り、同行させてもらう。
でも、そこまでだ。知りすぎて、もっと好きになってしまえば、辛くなるだけだから。

気付けば、〝後悔しないように〟とる行動を、履き違えてしまっていた。








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