完璧御曹司の優しい結婚事情
「葉月、いい?」

再び耳元で囁かれて、首をコクンと縦に振ると、向かい合わせに何度も口付けをされた。
足がガクガクしてくる。立っているのもやっとになって思わず樹さんのシャツを握り締めると、ふわりと体が浮いた。驚きと、突然足元の感覚を失った恐怖で、無意識に樹さんの首に腕を巻きつけていた。樹さんは私を抱き上げたまま、何度も優しいキスをしながら寝室まで連れていき、ベッドにそっと私を降ろした。

見上げる先には、これまで一度も見たことのない、熱い目を向ける樹さんがいた。さっとネクタイを外すと、優しく覆いかぶさって、至るところにキスをしていく。
時折、肌に感じる樹さんの吐息にピクリと体が跳ねる。これまで感じたこともない感覚に体を支配されていくのが怖くて、おもわず全身に力が入ってしまう。
私の変化を敏感に感じ取った樹さんが、顔を上げて心配そうに覗き込んでくる。けれど、その瞳は冷めないどころか、ますます熱を増していた。樹さんが自分を欲してくれていることがわかる。

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