完璧御曹司の優しい結婚事情
「わ、私も、樹さんとこうなれて幸せ」

一瞬目を見開いた樹さんは、口元を手で覆った。 
「葉月、あんまり煽らないで。葉月に無理をさせたくないのに、そんな可愛いことを言われたら、もっと求めたくなる」

耳を赤くして、焦ったようにそう言う樹さんに、私もますます赤くなる。

「シャ、シャワーを浴びてきます」

恥ずかしさから逃げるようにしてベッドを抜け出す。その後ろで、樹さんがクスクス笑ってるのが伝わってきた。ハッと気付けば、私をガウンを着ていた。自分で着たおぼえはないから、おそらく樹さんが着せてくれたんだと思う。
そんなの、羞恥心でどうにかなりそうだ。

ガウンを脱いで、鏡に映る自分の姿を見て息を呑む。首、肩、胸元……至るところについた赤い印。そういえば、昨夜、時々チクリとした痛みを感じたけど……その一つを、そっと手で触れる。

「キスマーク……」

言葉にしてみると、昨夜の情事がリアルに思い出されてくる。恥ずかしいのに嬉しくて、この印が樹さんの想いの現れだと思うと、幸せな気持ちでいっぱいになる。




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