完璧御曹司の優しい結婚事情
外に出ると相変わらず暑くて、日差しが容赦なく襲ってくる。ただ、遠くの空に目を向けると、怪しげな雲が広がっていた。

「夕立かもしれないね。降られる前に帰ろう」

真っ直ぐに樹さんのマンションに向かうと、怪しげな雲はますます近付いてくる。部屋に入ったと同時に、雷鳴が轟いた。それを合図にするかのように、突然滝のような雨が降ってくる。

「セーフだったね」

「ね。なんか、2回目におじゃました時のことを思い出しちゃう」

「そうだったね。あの時は、帰るに帰れなくなって。僕にとっては、人生観を変える夜だった」

「えっ?」

「葉月に、香穂の話をしたことね」

そうだ。生意気にも、上司と部下という間柄だった樹さんに、自分の思ったことを言ったんだった。

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