完璧御曹司の優しい結婚事情
「今日は、本当に接待と言われていたんだ。場所はさっきのホテルの上の階のレストランだった。エントランスでちょうど北沢さんと一緒になったんだ。彼女がきている理由はわからなかったけど、もしかしたらと嫌な予感はしていた。それならそうで、これっきりになるように、きっちり断るつもりで会場に向かった。葉月が見かけたのは、そのタイミングだった。
追いかけようとしたけれど間に合わなくて……とりあえず、店に向かったんだ。やっぱり、北沢さんの父である、あちらの社長と母親がいた。どういうことかと聞けば、仕事だと言わなければ、僕がこの場所に来ないだろうからと言わて……」

「樹さん?」

言い淀む樹さんを伺い見た。何やら言いにくそうに、口元を手で押さえている。

「あの場所で、思わず声をあげてしまった。迷惑だと」

樹さんが声を上げる?そんな姿は見たこともないし、想像もできない。

「こんなことは2度としないでくれと」

北沢さんは、確か取引先だったはず。大丈夫なんだろうか?

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