完璧御曹司の優しい結婚事情
北沢さんのことを誤解して逃げてしまったあの日。私は、樹さんからのプロポーズを受けた。
そこからの樹さんの行動は素早かった。翌日の仕事終わりには、社長である樹さんのお父さんに紹介され、同時に北沢さんは元の会社に戻ったと聞かされた。

「私が先走ったのもあって、葉月さんには辛い思いをさせてしまって悪かったね。樹もこんな素敵な人と付き合ってるのなら、もっと早くに会わせて欲しかったぞ」

「すみません。あと、葉月とは近いうちに結婚したいと考えてます」

「そうか。葉月さんの仕事ぶりは聞いている。褒め言葉はたくさん出でくるが、悪いことは一切出てこない。真面目で信頼できる人だと。
樹を変えてくれたのは、葉月さんなんだろ？」

「そうです。彼女のおかげで、香穂とのことも気持ちの整理がついて、前に踏み出すことができました」

社長はとても穏やかな表情で、樹さんの話を聞いている。父親として、樹さんのことを心配していたのだろう。「そうか」と応えた表情には、嬉しさと安心感が滲んでいた。

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