完璧御曹司の優しい結婚事情
週末、樹さんに連れられてやってきたご実家は、怖気ついてしまいそうな豪華なお屋敷だった。

「いらっしゃい。よく来てくれたわね。さあ、入って」

お母さん自ら出迎えてくれる。にこやかな表情に、少しだけ緊張が解ける。どうやら、反対はされなさそうだ。

お互いの紹介がすんでしばらくすると、お母さんに頼まれごとをされて、樹さんが席を外した。私をおいていくことを心配して、目を合わせてくれるから、大丈夫だと言うように頷いた。
リビングには、ご両親と私の3人だけになった。

「葉月さん。今日は来てくれて本当にありがとう」

改まった様子でお母さんに言われて、慌てて背筋を正す。とはいえ、元々崩してもいなかったけれど。

「樹はね、これまで我がままも言わなければ、反抗期もほとんどないままここまできたの。その樹が初めて自分を通したのが、香穂ちゃんとの結婚だったわ。誰もが結末をわかっていたのに、誰も反対できなかったわ」

当時を思い出すかのように、お母さんが続ける。


< 316 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop