完璧御曹司の優しい結婚事情

「それじゃあ……何から何まで、ありがとうございます」

「うん。どういたしまして。謝られるより〝ありがとう〟って言われる方がいいよ。さあ、乗って」

促された課長の車は、私も知ってる国産の高級車で、座り心地がとても良かった。

「川村さん、住所を教えてくれる？」

私が住所を伝えると、課長は素早くカーナビにセットしていく。

「同じ方面とは知っていたけど、思っていたより近くだね。電車だと同じ線だし、ここから数駅離れているだけだ」

同じ線とは言っても、数駅違うその間に、随分街並みは変わるんだけど……背の高い建物もうんと減るし、一気に庶民的な雰囲気になる。

「課長は電車で通勤してるんですか？」

「日によるかな。でもそうか。電車なら、通勤中に会うかもしれないんだね」

「そうですね。あっ、でも、課長はいつも早いので、出会うことは滅多になさそうです」