完璧御曹司の優しい結婚事情

「だめだった？」

王子スマイルを浮かべて、首を傾げる真田課長。雰囲気がいつもと違いすぎる。

「ちょっと、課長。キャラが変わってません？」

衝撃からいち早く立ち直った前島さんが発した言葉に、玉田さんが首を大きく振って、同意の意を示す。近くの人達も、私たちのやりとりに気付いて、ちらちら目を向けてくる。

「課長。もしかして、金曜日の夜、葉月ちゃんと何かあったんですか？」

前島さんが、疑わしげな目を課長に向ける。

「うん？何もないよ。タクシーで送っていっただけ。ね、葉月ちゃん」

「は、はい」

その葉月ちゃん呼びは、決定なんでしょうか……？おもわずどもってしまった私の返事を、前島さん達はどう捉えるだろう……

「ま、課長は間違いを起こすわけないか。葉月ちゃん呼びは、俺たちだけの特権でしたけど……よしとしましょう」

なぜか前島さんが許可を出し、呼び方が決定してしまった。
確かに、他の社員の中にはそのキャラクターから〝ちゃん〟付けの愛称で呼ばれている人もいる。だから、これがだめなわけではないんだけど……