完璧御曹司の優しい結婚事情
「えっと……みなさん、本当にそう呼ぶんでしょうか……?」

「えっ?だめだった?」

当然いいでしょ?と言外に滲ませるように前島さんに言われ、否定的な言葉は返すことができなくなる。

「まあでも、川村さんを困らせない程度にね」

「あれ?課長、冗談だったんですか?」

〝川村さん〟呼びにもどった課長に、前島さんが素早く反応する。

「だって、困ってるでしょ、川村さん。それに、僕の立場でそんなふうに呼べば、贔屓だと言われかねないしね。ごめんね、川村さん」

「い、いえ」

「課長でも、そんな冗談を言うんですね」

玉田さんが心底驚いたように呟いた。

「ははは。飲み会で、川村さんとも更に親しくなれたからね。2人とも、川村さんを困らせないように、ほどほどにしてね」

課長は王子スマイルを残して、自席へもどっていった。このやりとりは、なんだったんだろうか……

「年下の僕は、やっぱり川村さんにしておきます」

「俺は葉月ちゃんのままでもいい?でないと、鈴木と三浦だけちゃん付けとか、ありえないし。普段、俺以上に接点のない2人がちゃん付けとか、意味がわからない」

とりあえず、〝葉月ちゃん〟呼びは前島さん達同期3人でおさまりそうで、ホッとした。


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