完璧御曹司の優しい結婚事情
「でもさあ、それぐらいの頃からかなあ.…当時から課長は穏やかで、あの通りの人だったんだけど、他人に対して、どこか一線引いたような雰囲気になったのよねぇ」

「えっ?課長って、告白こそ断り続けてるけど、人付き合いは悪くないし……」

佐藤さんが、課長の姿を思い浮かべるかのように、視線を上方に漂わせている。

「以前はね、もっと自分を見せていたというか……まあ、年齢による変化なのかもしれないけどね」

「何かあったのかなあ?ねえ、葉月ちゃん。課長に一番近い部下として、何か知ってる?」

突然話を振られて、肩がピクリと小さく揺れてしまう。

「い、いえ。私は何も。一番近いとはいえ、仕事上の付き合いだけですから」

「まあそうよね」

「さあ、佐藤さんも葉月ちゃんも、そろそろ時間よ」


< 8 / 322 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop