トワイライト(上)

「ルームシェア?!」


彼女は少し声を上げて怪訝な表情を浮かべ、灰皿を見もせずに煙草を揉み消しながら続ける。


「あんたね、何も当日に決める必要無いでしょ……」


「そうだけど……言い出せなくて……」


尻すぼみになる言葉に彼女は深い息を吐き、二本目の煙草を指に挟んで言った。


「また、いつものお人好し発揮したのね……
 別にそれでも良いけど、内見して確かめたりしたの?」


その言葉に首を振って見せると、彼女は煙草を戻しながら続ける。


「それでも女なの?防犯面とか考えなさいよ、あんたみたいなの直ぐ襲われるわよ」


彼女が自分の事を心配して居るのが言葉に表れ、理解もして把握もしてるのに少し苛立って言葉を投げた。


「大丈夫だよ、女性だったから……それに前家賃も支払済みだし、今更返してなんて言えないし」


そこで互いの目線が合い、逸らす事なく見つめ合う中、彼女が小さく息を吐いて窘める。

「そんな怒ると皺が出来るわよ、早く店に戻った方が良いんじゃないの?」

「ありがと……」

何処までも気遣う彼女に舌を巻き、肩を落とした自分に追い討ちのような声が掛けられた。


「いいわよ別に、そろそろ谷口も本気出してくるわよ、しっかりしなさい」
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