トワイライト(上)
次第に嫌悪感を顔に浮かばせ、男性は躊躇い気味に口を開く。
「いや……息子だけど、もしかしてお袋に聞いた?此処の住所」
「いえ……不動産屋で聞きました……」
その言葉に思い切り嫌な顔をし、重い溜息を吐いて右側の部屋を覗き込み、早足で向かった自分の部屋を開けて項垂れた。
「マジか……」
店先で会った時とは全く違う状況と態度に戸惑い、どう声を掛けるべきかを迷って立ち尽くす。
すかさず男性は此方に向かって吐き捨てるように言った。
「今すぐ出て行ってくれる?」
「今、直ぐは……まだ、引っ越したばかりなので……」
無理難題を押し付ける男性に困惑し、身を縮めながら様子を伺う。
「じゃぁ明日で良いから出て行って、今日は何処か別の所に泊まって」
「何処かと、言われても……」
最早困り果てた自分は何の想像も出来ず、不機嫌な様子が落ち着くのを待つしかなかった。
けれど、それは瞬く間に崩される。
「自分の店の近くの満喫にでも行ったら?とにかく此処から出て行って」
そう言って男性は再び足早に右側の部屋へと入って行った。