トワイライト(上)
その場で暫く起きた状況と交わした会話を反芻し、何となく腑に落ちないままリビングを後にしようとした時。
軽快な着信音と同時に鈍い音が響き、思わず顔を顰めて気配を伺う。
「いってぇ……あぁ、もう……」
此方まで伝わりそうなほど、悲痛な声が微かに聞こえた。
そこで急に居た堪れなくなり、自室に入ってベッドに腰を下ろしながら再び反芻する。
交わした会話の中で男性は嫌悪感や不機嫌さを露にし、女性を目の敵にするような素振りが見受けられた。
それは全般的に示した物では無く、極限られた一部の女性だと伺える。
恐らくは自分を当て嵌めて態度に表し、回避した物だと言う結論に辿り着いた。
だがしかし、全くの勘違いで追い払われた自分は今や否定する事が出来ない。
男性が落ち着くまでは部屋を出ていようと身支度を始め、クローゼットから小さな旅行鞄を手にするとドアを2回叩く音が響いた。
もう催促しに来たのかと半ば呆れながら少しだけドアを開け、隙間から覗き込むように様子を伺う。
そこには罰の悪そうな面持ちで男性が居心地無さそうに佇み、自分と目が合った途端に逸らして言葉を吐き出す。
「言い過ぎたから悪いと思って……ごめん……」
「別に気にしてません……何となくですけど事情は掴めるので……」
多分、男性は母親と暮してると見せかけて安全を確保してたと思われ、母親は息子の男性を身を挺して護り続けて居たのであろうと予想していた。
けれど、それは全くの斜め上を行く展開へと進む。
「本当にごめん、今さっき不動産屋とお袋から話を聞いた
多分、勘違いしてると思うから言うけど……此処には俺しか居ない」