トワイライト(上)
谷口は暫く煙草を吹かした後で静かに言う。
「それで?話ってなに」
睫の陰りが帯びた瞳が此方を捉えたままでいた。
「……私……谷口さんとは付き合えない……」
その言葉に唇を少し嚙み、谷口は目を伏せて煙草を消す。
「分かってるよ、わざわざ言いに来たの、そんな事」
「言わなきゃ駄目だと思って……」
やたら大きな溜息を吐き、煙草を指に持ちながら谷口が呟いた。
「子供じゃないんだから、言われなくても分かってる」
「ごめんなさい……」
言葉も身も縮めた自分を眺め、ふと笑って谷口が言う。
「お前に好きな人が出来たら諦める、多分そいつ殴ると思うけど」
冗談か本気かも分からない言い草に苦笑いを浮かべて返した。
「殴るなら私の方だよ……悪いのは私だし……」
そこで手を止めた谷口の視線が此方に向き、じっと見つめたまま言葉を放った。
「お前を殴るくらいなら、俺はお前を抱いて後悔することを選ぶ」