トワイライト(上)
「ごめん……嫌だったよね……立てそう?」
そう言いながら彼は直ぐに手を離して此方の様子を伺っていた。
「はい……なんとか……ありがとうございます……」
取り敢えずは返事をしたものの、腰が抜けて力が入らずに苦笑いで取り繕う。
「もしかして、腰抜けてる……?」
「はい……でも、少しすれば立てるので……大丈夫です……」
自分を見ながら彼はまた罰の悪そうな表情を浮かべ、居心地無さそうな態度をして問い掛けてくる。
「俺で良ければ……手伝うけど……」
その言葉や態度に彼の人柄が見え、少しだけ可笑しくて笑みが零れた。
すると彼は笑い出すような息を鼻で吐いて言う
「こんな状況で良く笑えるね、でも、安心したみたいで良かった……」
「……済みませ、ん…」
軽く頭を下げると彼の額に当たって鈍い音がし、居た堪れない面持ちで見上げると彼は苦笑いを浮かべて手を差し出す。
「掴まって、支えになるか分からないけど……」
「ありがとう……ございます……」
覚束無い手で腕に掴まって立ち上がる身体を容易く彼は引き寄せ、背中越しに触れるように手を当て支えながら足元まで気にして部屋まで歩いてくれた。