トワイライト(上)

「ごめん、迷惑掛けるけど、手塚さんは部屋で休んでて
 明日の朝一に鍵を取り替えて防犯対策するから……」


彼は自分がベッドの縁に腰を掛けるのを見守り、申し訳なさそうな顔をして佇んでいる。


「警察には言わないんですか?」

「多分、物取りだと思う……でも、荒らされただけで何も取られてない」


確かに、言葉通りに部屋は荒らされただけで取られた物は一つも無い。

それでも、やはり不安は拭い切れずに抱え込んでいた。

戸締りを確認せずに出てしまい、更に同居人に迷惑を掛けてしまった罪悪感が襲う。


「本当に済みませんでした……終わったら請求して下さい……」


「大丈夫、手塚さんのせいじゃない
 朝に煙草吸って、窓開けたままだったから……俺の責任」


飽くまでも自身の不注意だと強く示した態度を前に黙り込む。

すると徐に彼は部屋を後にし、キッチンの方で何やら始めた。

その様子を暫く耳にしながらベッドに投げられた洋服を畳み、クローゼットに仕舞う力さえ無くして散らかったテーブルの上に重ねる。

そのまま呆然としていると、ドアを軽く叩く音と彼の声が聞こえた。

「入るよ」

「どうぞ……」

「これ飲んで休んで、明日も仕事でしょ?
 終わったら店に鍵届けに行くよ、おやすみ」

「ありがとうございます……おやすみなさい……」

手にしたのは真っ白い牛乳、それは彼の人柄を思わせるような温もりだった。
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