「No title」
「風鈴、怪我してないか?」
先輩の方へくるりと体を向かされ
そっと頬に先輩の優しい手が触れる
心配そうに眉を下げて覗き込む先輩に
少しドキリとときめいた
「胸ぐらを掴まれたくらいで特に何も…
寧ろ私から喧嘩売ったし殴られてもおあいこというか…なんというか…」
そこまで言って
ハハッとかわいた声で笑うと先輩は困ったように笑った
「ほんと勘弁して
まじで心配した
またこの前みたいなことになってんじゃないかって」
困ったように笑う先輩を見て
私は自分の考えの甘さを後悔した
人の脆さに先輩が敏感なことは
前の1件で分かっていたのに
自分は平気だからと
先輩の気持ちを考えられていなかった。