北風と太陽
太陽
北見風磨。
俺はあいつが嫌いだ。
俺は出来るやつだ。
俺はよく出来るやつだ。
勉強も運動も、大抵の事はサラッとこなすし、
なんせ……
顔がいい。
俺はイケメンだ。
おまけに人気者。
初めての彼女は中一の時。
挨拶をすればみんなが返してくれるし、
声をかければみんな聞いてくれる。
推薦で学級委員もした。
でも、
あいつは
あいつには
北見にはいつも適わなかった。
俺がテストで八十点を取ればあいつは九十点をとる。
俺が九十点を取ればあいつは九十五点をとる。
俺が九十九点をとったら、
あいつは百点をとるんだ。
体育の時も、リレーをやればあいつがアンカーになるし、
野球をやればあいつはホームランを打つんだ。
数学の時間も国語の時間も理科も社会も全部全部全部。
俺はあいつに勝てなかった。
小学校からの腐れ縁も高校まで続いて、俺は悟った。
俺はあいつには勝てない。
なんかもう、勝負したいと思わなかった。
俺は人気者だし、ていうか、高校生だし、ガキじゃないんだから勉強とか、授業とか、部活にマジになるとかダサくね?
俺が北見に勝負を挑むことはもうない。