北風と太陽
そんなこんなで晴空ちゃんと付き合って一ヶ月ー。
俺は北見と向き合っている。
「勝ったよね、俺。お前に勝ったよね?なぁ…北見…俺、初めてお前に勝ったよ。」
「………そうか。」
「…………それでさ、俺、お前に一つ質問があって…。」
「…………。」
「お前はそらちゃんのどこを好きになったの?」
北見は黙る。
しばらく間があって、俺はとうとうこらえきれなくなった。
「晴空ちゃんって優しいよね。疲れてるって言ったら心配してくれるし、可愛いしさ〜
なんで俺と付き合ってくれたのかなーってくらい。ほら、お前の方が頭いいしさ、身長も高いし、運動もできるしさー。」
「高宮さんは。……高宮さんはあんたを選んだんだろ」
北見は俺の言葉を遮ってそう言った。
(そうだよ。そんなん知ってる。)
「知ってるよ。」
「……。」
(勝った。勝ったのになんで)
「なんでそんな飄々としてんだよ。大好きな晴空ちゃんとられたんだぞ。悔しくねーのかよ。おい!怒れよ!「俺の方が先に好きだった何横取りしてんだ」って!「ふざけんな」って!」
「……っ!」
そうやって俺が北見につかみかかんだ時、
「太陽君!!!!!どうしたの!?北見君も何かあったの!?」
俺の名前を呼んだのは晴空ちゃんだった。
「晴空ちゃん……。」
それに気づいて、俺はパッと北見を離し、笑顔を作った。
「なんでもないよ。晴空ちゃんこそ俺に用事あった?」
だけど、晴空ちゃんの顔は晴れなかった。