Sweetな彼、Bitterな彼女
わたしが本社へ戻るのは、どんなに早くとも九月末。
しばらく遠距離恋愛が続くけれど、リハビリにはちょうどいい。
簡単には会えない距離があるから、毎日メールやメッセージを送り合い、時には電話もして、コミュニケーションを取っている。
物理的な距離は大きくとも、お互いの精神的な距離は、以前より近くなったと思う。
蒼との関係を深めることへの恐怖心も、徐々に薄れていた。
この調子で行けば、蒼の懇願を受け入れて、同棲してもなんとかやっていけそうな気がする。
スマホを鞄にしまおうとしたら、再びバイブが作動した。
(あれ……? もう一つある?)
続けて送られて来た画像には、紙きれをくわえ、嬉しそうに走り回っている白猫の姿が描かれていた。
(……何だろう?)
意味が分からず首を傾げながらオフィスを出ようとした目の前に、誰かが立ちはだかった。
「黒田」
顔を上げ、驚いた。
「……雪柳課長?」