Sweetな彼、Bitterな彼女
隠れて付き合っているわけではないけれど、なんだか気恥ずかしい。
「とにかく、あいつらは無視していいから」
「そんなことできないわよ。蒼の友だちでしょう?」
いい彼女だと思われたいわけではないけれど、蒼の友人にイヤな印象を与えたくない。
手を振り、にやにや笑っている彼らに軽く会釈しようとしたら、蒼がわたしの前に立ちはだかった。
「蒼、挨拶くらいは……」
「しなくていい。仕事だから」
多分に、蒼の「からかわれたくない」という私情が入っている気がするものの、仕事関係者に「彼女」を紹介するほうがおかしいのも確かだ。
「わかった。邪魔しない」
そう言ったわたしに、蒼はバツの悪そうな顔をする。
「邪魔じゃないよ。俺が、心狭いだけ。金曜日、楽しみにしてる」
「わたしも、楽しみにしてる」
あと二週間耐えればいいだけだと思えば、自然と気持ちも上向く。
「忙しいとは思うけど、無理しないでね? 蒼」
「紅も。残業、あんまりしないで」
チュッと音がして、頬に柔らかいものが触れた。
「…………」
我に返った時には、すでに蒼たちの姿はなく、カフェラテもすっかり冷めていた。