Sweetな彼、Bitterな彼女
Bitter version 3
まだ、春とは言い切れない、二月最初の金曜日。
閉店間際のスーパーで水炊きの材料を買い込み、足早に蒼のマンションへ向かうわたしは、うわの空だった。
終業時刻十分前に、上司の雪柳課長に言われたことが、頭の中を占めている。
今夜は、久しぶりに蒼と二人きりで、ゆっくりするつもりだった。
もうすぐバレンタインデーだから、どんなチョコレートが欲しいか訊きたかったし、キャンセルになる可能性はあるけれど、デートの約束もしたかった。
しかし、そんな甘い話はできそうもない。