冷酷姫に溺れて。
授業の後、俺は真優を誰もいない放課後の教室に呼んだ。
「で、話って何?返事でも決まったの?」
俺は頭を下げた。
「ごめん。俺はお前の気持ちには答えられない」
「知ってる」
「俺を諦めてくれ」
「いや」
「何で俺がいいんだよ」
光の方が人望も厚く、カッコよくていい奴だ。
それなのに何で俺がいいんだよ。
「…千影はいつだって私のヒーローだった。努力家で誰にでも優しい千影だから好きになったの。もう、十年も片思いしてるんだよ?簡単に諦められないよ」
真優は泣きながら俺に言った。
十年も前から俺のこと思っててくれてたんだ。
全く気がつかなかった。
「…逆にさ、霜月さんのどこがいいの?」
どこが好きか、そんなの決まってる。
「霜月さんは誤解されやすいんだけど、冷酷なんかじゃない。俺が好きになった日、霜月さんは天使みたいだった。優しくて可愛くて、ただ愛しくて…守りたくなるような女の子だったんだ」
強そうに見えて、本当は脆い。
だけど、誰にも頼らず一人で戦っている彼女を俺は守りたいと思ってた。
つまらなさそうな君を笑顔にしたいって思ってた。
君の隣で笑いたいって、心の底から思ったんだ。
「俺も本気だから諦められない。だから、ごめん」
「そっか…悔しいけど千影は霜月さんのことしか見てないんだね」
「ああ」
ほんと、俺は霜月さんのことばかり考えてる。
「……誤解、解いてきなよ」
「でもお前が…」
「いいの。私のことは心配しないで。今言った方がいいよ。千影は優柔不断だから、気持ちが整ってる今言ってきなよ」
「サンキューな。あと、こんな俺のこと好きになってくれてありがとう。これからも友達でいてくれたら嬉しい」
俺は教室を出て、生徒会室に向かった。
「ばか、最後かっこつけんな。……せっかく気持ち押し殺したのに溢れるじゃん。ひっく…うぅ……っ」
瞳から大粒の涙が溢れた。
それは恋の終わりを物語っているようで。これから新しい道を切り開いているようなものだった。