冷酷姫に溺れて。
「…さあどうでしょうか。ただ言えるのは君が嫌いということだけです」
「気が合うな。俺もお前が大嫌いだ」
「ふふふ…そうですね。君の言う通りですよ、彼女とは契約で付き合ったんです。恋愛感情なんてサラサラない。一ミリも持ったことありません。契約というのは僕を会長にしてくれる代わりに付き合うというものです。いわば取引ですね」
なんでそんなこと契約する必要があるんだ?
文武両道、品行方正、人脈もあり、世間的には人柄もよい会長なら楽勝で会長になれるだろう。
「僕は小中といじめられていてね。彼女が助けてくれたんだ」
なんの躊躇もなく、平然とそう言う会長の目には希望はなかった。ただあるのは諦めと楽になりたいという気持ちのみだと感じられる。
確かに気の強そうな副会長なら助けるだろうな。
「高校生になって、僕は父親のように会長になりたいと強く思った。何にも知らない呑気な親には期待されていたし。だから、絶対会長にならなくちゃいけなかったんだ」
そうか、会長は重圧に飲まれていたんだ。
苦しいのに誰にも言えず、ただ真面目で模範的な人間になることだけを目指して生きてきた。
親からの無言の重圧、期待。
それから楽になるために嫌々会長になったんだな。