冷酷姫に溺れて。
「…彼女は絶対的人気があった。だから、友達のいなかった僕は彼女に頼むしかなかった」
会長は俺を見て、軽く笑った。
「僕はバカだろう?彼女に騙されて、彼女に支配されていた」
は、嘘だろ?
てっきり彼女を弄んでいるのは会長だと思っていたのに会長は副会長に支配されていたんだな。
「それで僕は彼女の支配から免れたくて、一人目の女と付き合ったんだ。でも、彼女にバレて、その女はいなくなったよ。二人目も理紗も…」
会長は歯を食いしばって、壁に手を打ち付けた。
「理紗は優しくて可愛くて、すごくいい子だった。僕が思っていたよりもずっと!!いつしか僕は…本気で理紗のことが好きになっていたんだ」
会長のこの気持ちは本当なんだろう。
そうじゃないとこんな風に感情的になれない。
あの何を考えているか全くもって分からない会長が取り乱すぐらい、霜月さんのこと本気なんだ。
「でも僕は悪になるしかなかった。自分でも分かってる。どれだけ最低で嫌われるようなことをしたか。理紗のためにも僕のためにもこうする他なかったんだ。そうしないと彼女の支配は強くなって、僕は彼女から解放されない。だから、あんな酷いことをしたんだ。…すまなかった」
会長は俺に頭を下げた。
こんな弱々しい会長は初めて見る。