冷酷姫に溺れて。
「会長、もういいですよ。俺は大丈夫です。先に霜月さんに謝ってくれませんか?」
「もちろんそうするよ。それに彼女との関係も終わらせてくる。初めからそうするべきだった。こんな馬鹿馬鹿しい茶番のような関係は絶つべきだって、君と関わるまで気付かないなんて、ちょっと癪だね」
こんな嫌みったらしいことを言うまで会長の機嫌はよく、吹っ切れたみたいに顔色がいい。
それに何故だか、この会長なら信じてもいいだろうという気持ちになった。
「でもね、君のことが嫌いなのは本心さ。僕の理紗を奪ったからね」
「そうですか」
「じゃあ、僕は行くよ。理紗と上手くいくといいね」
「え…」
「なんて、一ミリも思ってないから安心して」
何だよそれ。
俺は生徒会長室から出ようとして、足を止めた。
「言い忘れてたよ。僕は君のこと嫌いだって言ったけどね、本当は君が羨ましかったんだ。確かに容姿は普通だし、君の両親と君を比べたら、君は凄く劣るところばかりだ。でも、全く感情を露にしなかった理紗をあれ程までに変えた君に驚かされた。それに周りの人間が君に信頼を置いている。それはなかなか出来ないことなんだよ。それが当たり前じゃないこと、よく心に刻むことだね」
若干ディスられた気もしたが許してやろうと思った。
会長は本当の悪じゃなかったんだから。