冷酷姫に溺れて。
「先輩、お話って何ですか?」
色々と吹っ切れたような先輩が目の前にいる。
きっと入井くんが先輩を変えてくれたんだろう。
「僕は君に酷いことをした。本当にすまなかった」
「すまなかったで済む話だと思いますか?私はたくさん傷ついたんですよ?」
「…僕のことを嫌いになっただろう。きっと僕を憎んだと思う。自分でも十分分かってる。自分がどれだけのことをしたか」
「私は私のことをちゃんと見てくれた先輩が大好きでした。ひとりぼっちだった私に手を差し伸べてくれた先輩を嫌いにはなれませんよ。確かに怖かったりしました。ですけど、先輩を嫌うのは先輩に恋してた私を否定するような気がして出来ません。だから、先輩も気にしないでください」
「僕も君のこと、本当はすごく愛してた。ごめんな…理紗…ありがとう…」
先輩は泣いた。
弱々しくて私の好きだった頃の先輩とは違う。
でも、私はこっちの先輩の方が好き。
本音をいつも隠してた先輩と違う、素直な先輩を見れたのも、こうやって和解できたのも入井くんのお陰だと思う。
あの人は私たちの絡まった糸をほどいてくれただけじゃない。
私たちの進むべき道を教えてくれた人。
入井くんには人を変える力があると思う。
私はそんな入井くんの虜になってしまっていたようだ。