冷酷姫に溺れて。


「理紗から呼び出すなんて、珍しいね」

「そうですか?私はあんまり先輩から呼び出されることはなかったと思いますが」

「まあね」

先輩の様子はいつもと変わらない。

「今日呼び出したのは話をするためです」

「分かってる。彼絡みだろ?」

彼、入井くんのことか。

「ええ。それに私たちの進退も話さないといけなかったので」

「確かにそうだね」

私は先輩に頭を下げた。

「どうか入井くんを治す薬を下さい。あのままじゃ入井くんが無理しちゃう…」

「いいよ」

先輩は私の顎をくいっと上げた。

「……金輪際、彼と関わらないことを約束してくれたらね」

えっ……?

入井くんと関わらない?

「彼とは話さない、話しかけられても無視するとかそういう事だよ。守れないのならいつでも倒しにいけるから」

先輩、本気だ。

入井くんのお陰で変われたのに。

その恩人に私が酷いことするの?

せっかく出来た友達なのに。

「先輩、それは無理です。
私、入井くんと契約しましたもん」

「……はっ?」

先輩は私の首筋を指でなぞった。

「…契約の証」

なぞられた首には入井くんの家の紋章が浮き出ていた。
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