和服探偵
「可愛いでしょ?」

亜梨沙ちゃんはそう言って首を傾げる。確かに、亜梨沙ちゃんは着物がよく似合ってるし可愛いけど……。でも、風紀委員として見逃せません!

「亜梨沙ちゃん、学校にはせめて制服で行こう?じゃないと先生に怒られるよ?」

「先生は逆に私が怖いのよ。あっ、可愛い!また作ったんだ〜」

亜梨沙ちゃんは袴から着替えることはせず、僕の作ったぬいぐるみに触れる。その無邪気は笑顔を見ると、ドキドキしちゃう。そう、僕はずっと亜梨沙ちゃんのことが好きだ。でも、僕みたいな女々しい奴に好かれたって嬉しくないよね。だから、この気持ちは隠してる。

あ、そうそう。なぜ先生が亜梨沙ちゃんを怖がるかというと、亜梨沙ちゃんは日本でも指折りの財閥のお嬢様。親戚に数多くの有名人がいるから先生も叱るに叱れないって感じ。だから、亜梨沙ちゃんは気にすることなく袴や着物などを着て学校に行っている。

「虎太朗、これもらってもいいの?」

亜梨沙ちゃんがぬいぐるみを抱きしめ、キラキラした目で訊ねる。僕は「うん、いいよ」頷く。すると、亜梨沙ちゃんはますます嬉しそうに笑うんだ。
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