和服探偵

刑事さんと話していた亜梨沙ちゃんがマイクを手に、真剣な目で言う。すると、視線は当然亜梨沙ちゃんに注がれた。

「はあ？犯人？」

「探偵ごっこじゃねえんだぞ！！」

苛立った大人たちにそう言われても、亜梨沙ちゃんは顔色を崩したりはしない。「まず華さんの死因ですが……」と話し始めた。

「華さんの死因は、ヒ素による中毒です。やはりヒ素は紅茶やティーポットではなく、カップに仕込まれていました。ヒ素は農薬などにも使用されており、誰にでも手に入れることができる毒と考えていいと思います」

「なら、犯人が誰かわからねえじゃねえか！！」

そんな声があちこちから飛び交い、僕は「うるさい！！黙って話を聞いてあげてよ！！」と思わず言ってしまった。

会場は一瞬で静かになり、僕は恥ずかしくなる。でも、亜梨沙ちゃんの話を聞く方が大切だ。亜梨沙ちゃんの口が「ありがとう」と動いて嬉しくなる。

「今回、結婚式が始まる前に華さんのもとにウェディングドレスとクローバーが贈られてきました。これは、華さんに対する祝福ではなく殺害予告だったのです」