和服探偵

重々しく響いたその言葉に、僕は驚く。だって、どちらも縁起の悪いものではない。そうみんな思っているようで会場がざわついた。

「古代ヨーロッパでは、死と結婚は密接な関係にあると考えられていました。今でもフランスの一部の村では死者に婚礼衣装を着せて埋葬する習わしが残っているそうです。……そして、その時着飾った死者の胸元には一枚のコインが置かれます。しかし、ウェディングドレスと共に贈られてきたのはクローバーでした。これは、犯人からのあるメッセージだったのです」

「クローバーが、犯人のメッセージ？」

僕は呟いてしまう。だってクローバーの花言葉はとてもいい言葉ばっかりのような気がする。どうして？

「クローバーの花言葉は、私を思って、幸運、約束。そしてーーー復讐」

会場全体を見渡していた亜梨沙ちゃんは、ある人物を見つめる。その視線の先にいるのが犯人だ。僕の緊張が高まる。

「あなたは華さんとずっと一緒にいました。華さんの全てを知っています。紅茶をブランドのカップで飲むことなど、もちろん知っていました。だから持って来たんですよね？佐倉さん」