和服探偵
席についてから急いで宿題を取り出した僕だったけど、やっぱりわからない。しかも焦れば焦るほどわからなくなっていく。

その時、「ほら」と亜梨沙ちゃんが宿題を見せてくれた。隣を見れば、亜梨沙ちゃんは「やっぱりね」と言って僕を見つめる。

「やっぱり?」

「あんたが宿題をし忘れていたことは、最初からわかってたよ」

「どうして?」

僕が訊ねると、亜梨沙ちゃんは妖艶に微笑む。その目に囚われるともう目が逸らせない。

「虎太朗はいつも、歴史の宿題がある時は私が朝あんたの家に行った時、「ここって正解してる?」って必ず聞いてくるの。もちろんその時に手編みはしてない。でも、黙々と手編みをしている時は宿題の存在を忘れていた時よ」

「相変わらずすごい観察力だね……」

亜梨沙ちゃんは、人のことをよく見ている。そしてその些細な変化にすぐ気付くんだ。まるで探偵みたいに。いや、もう探偵かな。事件をいくつか解決したのを見たことがあるしね。
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