普通の幸せ

 風呂に浸かっていると、彼女がドアの前に来た。
「裕さん」
「んー?」
「あのね、さっきから、電話が結構な頻度で鳴ってて。一応知らせておこうと思って」

 ……多分、会社だ。何かトラブルでもあったか。

「わかった。電話はほっといていいから」
「はーい」
 彼女は戻っていった。

 面倒にならなきゃいいな、と思いながら、風呂から出る。



 リビングで、電話を確認する。
 着信10件。全部会社からだった。

 キッチンから彼女の声が飛んでくる。
「やっぱり会社?」
「うん」
 キッチンからは、いい匂いがしてきていた。この匂いは、多分汁物だ。

 嫌な予感を感じつつ、会社に電話をかける。
「システム課の石川で……」
『あー石川さん!助けてください!』
 名乗った途端に叫ばれた。
 同じ部署の後輩だった。どうやらヤツがなにかをやらかしたらしい。
 状況を聞きながら、出かける準備を始める。会社に戻らないとダメな感じだった。
 自分が行くまでにやっておいてほしいことを伝えて、電話を切った。



< 2 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop