爽やか王子の裏側は
園川くんと長谷川くん
放課後、言われた通り旧校舎に向かう
こ、怖いな
チクられてたらどうしよう
長谷川先生の車、まだあるし…
うぅ
いつもより重い足取りで旧校舎に向かう
!!
♪〜
ピアノの音だ
この芯のある音は…
長谷川くんだ
さっきまでの重い足取りを忘れてスイスイと階段を上る
キッ…
扉を開けると
…っ
「王子様…」
「え?」
音が止まった
え、ま、いま、私声出てた?
「王子様って俺?」
!!!
「いや、ちが、いや、ちがくな、え?ま、いやですねあの…」
う…
「あんまりにも綺麗だったので…」
ペダルにかかる長い足
ピアノと同じ色をした艶のある髪と、それがよく似合う白い肌
夕日を受けて輝いている
「俺が?」
ま、まあ…
「へぇ…お前俺のこと嫌いなんじゃないの?」
う
「だ、だからそれは訂正しました」
「ふーん。じゃ好きなの?」
「なっ違います」
「はは、冗談だよ」
冗談言うのかこの浮き沈みのない顔で
「なんですか?呼び出して」
「ん、ああ。伝えとこうと思って。」
?
「兄貴に許可取ったからいつでも使っていいよ、ピアノ」
……
「へ?」
「ここのピアノ。あんたならいいってさ」
…えっと…ん?
「だーかーら、旧校舎のこのピアノ。兄貴が居ても居なくても、好きなときに弾けばいいってさ。」
え、
ここのピアノを?
「俺からお願いしてやったんだよ。」
ほ?
「長谷川くんが」
「うん。だから報告のため。」